太鼓館特別研究

新居浜太鼓台の進歩と調和(発祥伝播の通説)

 

 

≪太鼓台は、大阪・堺が発祥の地で、文化文政期に海上交通の発達に伴い瀬戸内沿岸の各地に伝わった≫

 

 

書籍「新居浜太鼓台」(編集発行新居浜市立図書館、平成2年3月30日発行)に、太鼓台の発祥と伝播に関する研究発表記事が2本掲載されています。成願寺整さん著「太鼓台のふるさと」と尾ア明男さん著「新居浜太鼓台の周辺」の2本です。

 

先ずは、成願寺整さん著「太鼓台のふるさと」(書籍「新居浜太鼓台」128177頁)の総説部分の記述を復習しましょう。原文のまま掲載します。

 

 

(↓ここから「太鼓台のふるさと」の記述)

 

 

 

 

◆太鼓台の発生◆

 

西日本各地にみられる太鼓台全体の発祥の地と年代の特定は、太鼓台研究の最初の疑問であり、かつその解明をもって研究のゴールとすることもできる最大の課題だが、ここでは結論を避け、一応、通説を紹介するにとどめたい。

 

日本全国の山車の出るほとんどの祭礼が、京都・祇園祭りを模したか、あるいはその影響を多かれ少なかれ受けていることは、ほぼ間違いない。近世の地方都市が京都の街並みをまねたように、祭礼もひたすら祇園祭に似た雰囲気を作り出そうとしたと思われる。

 

太鼓台もその例に漏れず、祇園祭に登場する「かき山」に原型が求められ、安土桃山時代、南蛮貿易で財をなした大阪・堺の豪商が作らせた(若松均氏説)ものが、江戸も中期の元禄時代になり、上方町人文化の開花とともに派手になり、文化・文政期ごろ、現在のように布団を積み重ねた形をメーンに、おみこしのような方形造りや入り母屋造り、さらには切妻屋根に唐破風造りの細工を凝らしたものなど多彩な太鼓台が作られていったようだ。

 

 

◆伝播◆

 

 

これらの太鼓台は化政期ごろ、海上交通の発達と相まって一気に、瀬戸内海沿岸の隅々に伝わっていった。そして、祭りを支える若者の人口が急激に減るなどで、廃れていった一部地域を除き、150年以上たった今もなお、各地独自の発達を遂げた特徴ある太鼓台が、祭礼に彩を添えている。

 

発祥の地とされる大阪府下全域をはじめ、近畿では京都府北・南部奈良三重県和歌山県の一部で見られるほか、兵庫県でぐっと範囲が広がり、とりわけ播州淡路島で、その数は頂点に達する。

 

四国に入って、徳島香川愛媛の3県は、太鼓台の一大宝庫と言われ、本場大阪をしのぐにぎわいを見せている。中国地方では、岡山広島山口県と山陽道に沿って分布。

 

また、瀬戸内海に浮かぶ島々にも多く、淡路小豆の両島を筆頭に、伊吹島本島(以上香川県)神島(岡山県)因島大崎下島倉橋島(以上広島県)弓削島岩城島大三島伊予大島津和地島(以上愛媛県)などに点在している。特に、小さな島になるほど素朴な形の太鼓台が残っていることが多く、今日の新居浜のようなけんらん豪華なものに発達する以前の、言わば原型ともいえる形を探るうえで貴重な存在になっている。

 

そして、西の端・九州。さすがに、近畿や四国地方ほどの数も派手さもないが、あの時代によくぞここまで伝わったもの、という感慨が深い。佐賀県伊万里市長崎市宮崎県日向市東諸県郡国富町熊本県天草郡苓北町などに、ほとんど装飾のつかない骨組みだけの太鼓台が残されていて面白い。

 

 

 

 

(↑ここまで「太鼓台のふるさと」の記述)

 

 

 

≪四国には寛政元年(1789)予讃県境付近に初登場≫

 

 

 

次表は、尾ア明男さん著「新居浜太鼓台の周辺」(書籍「新居浜太鼓台」(編集発行新居浜市立図書館、平成2年3月30日発行)所載、179218頁)の「(付)太鼓台に関する年表」の記載事項のうち、太鼓台著名各地に太鼓台が登場した記事を西園寺穂純が独自に抜粋のうえ一部加筆したものです。

 

 

年 次

登 場 地

 呼称と記録

宝暦8(1758)

兵庫県姫路市 

「神輿太鼓」(松原八幡神社「御神事御規式定」)

寛政元(1789)

伊予三島 (現四国中央市)

「神輿太皷」(「神輿太皷扣覚帳」)

寛政元(1789)

大野原町(現観音寺市)

「ちょうさ太鼓」(大野原八幡神社「御神幸行烈入用覚帳」)

文化2(1805)

伊吹島(観音寺市)

「太鼓」(「太鼓寄録帳」)

文化3(1806)

川之江(現四国中央市)

「神輿太鼓」(大庄屋「役用記」)

文化9(1812)

小豆島池田(現小豆島町)

「呼称不詳」(池田八幡宮祭礼絵馬の絵)

文政6(1823)

新居浜市

「太鼓」(「船大工仲間永代迄の諸覚帳」東町太鼓)

文政9(1826)

西条市

「みこし太鼓」(一宮神社文書)

 

 


 

 

(ここから西園寺穂純の個人意見)

 

●太鼓台は新居浜が発祥の地ではなく、瀬戸内各地と同様、約200年前に大阪方面から順次伝播して来て、その後、新居浜で新居浜独自の発達を遂げたようです。

 

 

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