西正寺穂純の個人意見

 

新居浜太鼓祭りの安全上から見た諸対策

 

本項は前出安全上から見た新居浜太鼓祭りで探った危険の原因についてその対策を個人意見として述べたものです。

 

対 策(その1)

 

ぼんやりとではありますが原因がある程度分かってきますと、その対策も講じることが可能です。

 

最初に、2輪車の持つ危険性を低減する方法を探ることとしましょう。現在の太鼓台の2輪車は外に対してムキ出しで取付けられているという現実があります。ここを何とか出来ないかと思います。自動車を思い浮かべて見ましょう。トラック・バス・乗用車はもとよりバイク・自転車・三輪車に至るまで回転する車輪には何らかのカバーが取りつけられているではありませんか。これらには泥除けという目的があるのですが、少しでも車に人間がかみ込まれる危険性を低くする役目も果しています。産業安全の世界では回転する物にカバーというのは常識中の常識です。私は太鼓台の2輪車にカバーの取付けを義務づけることを提唱したいと考えます。欲を言えば、車輪の前後に転んだ人を掬う設備、具体的には昔のチンチン電車の前にあったスカート状のネットみたいなものが取付けられないかと思います。仮に車輪の前で転んだとしても絶対に車輪に轢かれない方策を講じることが不可欠なのではないでしょうか。とりあえずこれだけでも講じておれば死亡事故の発生件数は大幅に減少すると考えます。

 

もう一点、太鼓台の2輪車の基本的な欠点を指摘しておきたいと思います。太鼓台の2輪車にはブレーキ設備が無いのです。安全上急停止を必要とする場合でも人力によらなければならないのが現状です。車にブレーキは必需品ではないでしょうか。指揮者がペダルを踏んだり、レバーを引くとブレーキが容易にかかればと思います。別に動力でなくても人力ブレーキでも何でも良いのです。岸和田の地車の前梃子のようなブレーキ係が配置できないものでしょうか。

 

次に四本柱の安全性の強化を提言します。平成9年の統一寄せで久保田太鼓台の攻撃により江口太鼓台の九重が落ちました。木製の四本柱はヘタをすると一撃で九重が落ちます。九重が落ちれば九重係の人はもちろん地上の舁き夫や見物人にも多数のケガ人を出す可能性があります。江口の九重係がケガをしたかどうかは不明ですが、やはりこれは防止しなければなりません。何と言っても四本柱にはステンレスパイプが強く、金属製のものを義務づけるのが先決でしょう。そうすれば、棒折りを狙った棒端に鉄材をつけたりする汚いケンカは少なくなるのではないでしょうか。

 

太鼓係対策も忘れてはなりません。あまり事故例が無いと言っても最も危険な仕事であることに変りはなく、事故の際の健気に太鼓を叩き続ける太鼓係が相手の舁き棒に突かれて被災する様子は想像しただけでもゾッとします。今のところ太鼓係2名は太鼓台の進行方向とは横向きに座って棒による危険を少なくしています。進行方向に向いて座っているのに比べて四本柱を盾にできるからです。この意味からも四本柱は金属製でないと駄目なのです。昭和30年代には大太鼓を九重に上げて九重の中で太鼓を打ち続けるという作戦がとられたことがありましたが、最近は例を見ません。

 

上で述べました諸対策は全くケンカをしないのならば、無用の対策でしかありません。車輪のカバー設備やブレーキ設備は見た目祭礼の風流としては大袈裟で違和感がありますし、四本柱も木製の方がしっくりすることは分かっています。「ケンカはしないと申し合わせているのだから安全対策を講じる必要などない」とか「安全対策を施すことはケンカをすることを追認してしまう」とのご意見もございましょう。しかし、現代社会においては、ケンカをする或いはケンカになってしまう可能性が万に一つでもあるのならば、ケンカになってしまうことを前提として安全対策を講じておくべきことが大切ではないでしょうか。多かれ少なかれ何らかの危険性を感じながらも何だカンだと言って何らの対策を講じないのは人命を軽視した行為だと思います。各太鼓台や運営組織は自主的に早急に対策を講じましょう。仮に対策を講じない太鼓台があったとしたら、その時こそ行政の出番です。堂々と行政指導すれば宜しいのです。私たちは何としても、これ以上新居浜太鼓祭りから死者を出すわけにはいかないのです。

 

対 策(その2)

 

これまでは太鼓台の構造面を中心に見てきましたが、これからは管理面について見て行くこととしましょう。安全管理体制については一応の体制作りは完了しているハズです。ところが現場で時折混乱するのは何故でしょうか。これは現場において総責任者が誰であるのか判然としないことに起因していると思います。

 

現場には指揮者が居て特別の法被を着ているので分かりやすいのですが、指揮者の指示と本当の総責任者の指示とが異ることが多々あります。時には運営委員会の法被を着た人がケンカをけしかけている(ように見える)ことさえあります。何らかの格好で総責任者が誰であるのか分かるように目印をつけ、総責任者の意図が何であるかを分かるようにしておく必要があると思います。黒山の人だかりでもすぐ分かる方法は何かないものでしょうか。最近は幟旗が出て指示を出している所もありますが、旗が沢山あってどれがどれだか一目では分かりません。総責任旗を明確にするのも一つの方法ではないかと思いますが、もう少しスマートでエレガントなやり方を考案されればと思います。

 

次に、舁き夫登録方式の厳守安全教育の徹底を声を大にして申し上げたいと思います。いわゆる外人部隊の排除対策が迫られたことがありましたが、平成7年はこれを法被の着用徹底で乗り切りました。これは是非とも継続して欲しいと希望します。加えて、舁き夫講習制とでも申しますか仮称「太鼓台運行者講習」制度でも導入して、太鼓台についての相当の認識と知識を持った人物でなければ運行に関与することが出来ないような制度とすべきです。講習制とすることには批判もありましょうし、直ちに運用は無理かと思いますが、教育は絶対に必要であると考えます。全市的な運営委員会組織が運営する太鼓台についての教育を行う機関の設置が早急に望まれます。

 

市民全体に対する平和運行の機運の醸成も重要な課題です。平和運行シンポジウムの定期的な開催だとか平和祭りビデオの製作とかの気長い取組みが必要であろうと思います。特に幼少のころから、平和運行意識を植え付ける教育は何度も何度も繰り返して行うべきだと思います。私は太鼓台教育を行う機関と平和意識の高揚を図るための共通の機関として、太鼓会館が適当だと考えています。太鼓会館構想は15年ぐらい前から出ては消え消えては出るといった感じでなかなか実現しないのですが、この間に香川県豊浜町は「ちょうさ会館」を、岸和田市は「地車会館」を開館させ、西条市の「こどもの国」の展示も質が高いです。どこも観光客向けの展示中心ですが、ここは後発の優位性を武器にして、教育機関としての機能をも合わせ持った平和な太鼓台の殿堂としての太鼓会館を早く開館させて欲しいものです。

 

 

                                  (121119 記載事項変更)
130624 デザイン変更)
140817 記載事項追加)

 

 

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